【技術検証】マニュアルの「犯人」は特定できた。しかし、その解決策をAIから引き出すには“ズル”が必要だった話

 こんにちは、システムエンジニアの上野です。

 前回、「NotebookLMで最強のマニュアルを作る実験」を行いました。 そこでAIが導き出した結論は、「新人がルールを破るのは、サーバーが遅すぎて仕事にならないから」という物理的な事実でした。

 原因は特定できました。 しかし、ここで「じゃあサーバーを買い替えましょう(見積り300万円)」と言って通るなら、苦労はしません。 中小企業の現場に、そんな予算はないのです。

 そこで私は、NotebookLMに対し、「金を使わずにこの問題を解決せよ」と迫りました。

 結論から言うと、解決策は見つかりました。 しかし、そこに至るプロセスには大きな罠がありました。正直に白状します。

1. 素直に聞いても「正論」しか返ってこない

 まず、私は「現場の悲鳴(日報やトラブル報告)」だけを読み込ませた状態で、AIに解決策を聞きました。

 ……ごもっともです。 NotebookLMは「与えられた資料」から答えを探すツールです。 現場の新人の「愚痴」の中に、高度なIT解決策が書かれているはずもありません。

2. エンジニアの知識で「誘導尋問」してみた

 ここで私は、少し意地悪をしました。 私は「Robocopyコマンドで帯域制限すればいけるんじゃないか?」というかすかな記憶がありました。

 そこで、AIへの指示(プロンプト)をガラリと変えてみました。

 すると、AIの態度が一変しました。

 出ました。正解です。 これで「0円で解決する方法」が見つかりました。めでたしめでたし。

 ……とは、なりませんよね?

3. これは「AIがすごい」のか?

 冷静に考えてみてください。 この答えが出たのは、AIが賢かったからでしょうか? いいえ。私が「答え」を知っていて、AIにそれを言わせただけです。

 もし、IT知識のない現場の工場長や、新人の総務担当者が同じ質問をしていたらどうでしょう? 彼らは「帯域制限」や「隠しオプション」なんて言葉は知りません。 その結果、最初の「サーバーを買い替えろ」という正論を突きつけられ、「やっぱりウチにはDXなんて無理だ」と諦めていたはずです。

 これでは意味がありません。 私が目指す「野望」は、私がいない場所でも、新人が勝手に正解に辿り着ける仕組みを作ることなのですから。

4. 仮説:「知識」さえ食わせておけば……?

 ここで、NotebookLMの特性(RAG)を思い出しました。 NotebookLMは、「アップロードされた資料(ソース)」を脳みそとして思考します。

 今回、AIが解決策を出せなかったのは、私が「現場の日報」しか与えていなかったからです。 もし、このNotebookの中に、あらかじめ以下の資料が入っていたらどうなっていたでしょうか?

  • 「Windowsコマンドライン大全(PDF)」
  • 「Robocopy公式リファレンス」
  • 「ネットワークトラブルシューティング事例集」

 もしこれらが「現場の日報」と一緒に格納されていれば、私が「Microsoftの資格者になりきれ」なんて高度なプロンプトを打たなくても、AIは勝手にこう言ったのではないでしょうか?

5. 次回予告:プロンプトエンジニアリングから「ソースエンジニアリング」へ

 「AIにどう聞くか(プロンプト)」を工夫するのは、職人芸であり、属人化です。 真のDXは、「AIに何を読ませておくか(データソース)」を設計することにあるはずです。

 次回、この仮説を検証します。

  • 現場の愚痴だけでなく、「どんな技術ドキュメント」を食わせておけば、AIは勝手に「神SE」へと進化するのか?
  • 素人の質問でも、一発で「Robocopy /IPG」を引き出せる「最強の資料セット」とは何か?

 次回、「知識(ドキュメント)の与え方」でAIのIQが変わる瞬間をお見せします。


【次回予告】

▶︎次のステップへ(12/17 公開予定)

 「AIを“新人”から“ベテランSE”に変える、たった1冊のPDF」 プロンプトなんて頑張らなくていい。 次回、NotebookLMに「ある技術資料」を追加しただけで、回答の質が劇的に向上した実験結果を公開します。

 次回、ソースエンジニアリング検証編
必要なのは「質問力」ではなく「資料選定力」だった。

>> 【技術検証】AIに「要件定義書」を渡してアプリを作らせてみた。「丸投げ」vs「矛盾」vs「詳細」、勝つのはどれだ?

※次回記事は 12/16(水) 07:00 に公開されます。

私は、製造現場の「もったいない」を知るSEとして、その「めんどくさい」に隠された「お宝データ」を発掘し、仕組み化するお手伝いをしています。

「ウチも同じ問題を抱えている」 「何から手をつければいいか、一緒に考えてほしい」

そうお考えの経営者様、ご担当者様。 まずは、あなたの現場の「めんどくさい」を、私に聞かせていただけませんか。


関連記事

上部へスクロール