【元製造業SEが語る】DXがうまくいかない“たった一つ”の根本原因。それは『DX推進』がDXされていないからです。
こんにちは。製造業15年、現在はSEとして企業の「仕組み化」と格闘しております、上野です。
※この記事は、筆者(上野)の過去15年の製造現場経験と、現在のSEとしての知見に基づき、製造業におけるデータ活用の課題と「伴走支援」の重要性について考察したものです。ケーエスピー株式会社の公式な見解や、特定の企業様(過去の在籍企業を含む)を批判・評価する意図は一切ございません。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しましょう」 「AIを導入しないと将来の損失になる」 「このツールで一発逆転」
世の中は、DXという言葉で溢れています。 かつて製造現場で「10分の作業を5分にするために8時間悩む」ような非効率な効率化(?)に命を燃やしていた私にとって、デジタル化は魅力的な響きでした。
しかし、SEとして多くの企業様の「お悩み」に触れる中で、確信したことがあります。 なぜ、あれほど国やコンサルタントが煽るDXが、現場でうまくいかないのか。
結論から言います。 それは、「DX推進」というプロジェクト自体が、まったくDX(=本質的な効率化・仕組み化)されていないからです。
※この記事は、過去にツール導入で失敗した方や、AIのような“甘い誘惑”に今まさに飛びつこうとしている方に、あえて「辛辣な真実」という予防接種を打つためのものです。
DX推進が「教科書」だらけという矛盾
経済産業省が発表した「DXレポート」などを読むと、DXの重要性やあるべき姿が詳細に書かれています。立派な教科書であり、参考書です。
しかし、統計の専門家でも、崇高なコンサルタントでもない私は、こう思うのです。
「で、どうすればいいんですか?」と・・・。
なぜ、彼らは「教科書」にすがるのか?
ここで、あえて“辛辣な”問いを立てさせてください。 なぜ、多くのDX推進担当者や管理職は、自社の「めんどくさい」に向き合わず、他社の「成功事例」という“教科書”に飛びつくのでしょうか?
答えは単純です。それが“楽”だからです。 そして、彼ら自身が「“仕事(Work)”をしているフリ」をしたいからです。
ゼロから自社の「仕組み」を設計する(=本当の仕事)のは、「何百時間悩む」ほどの苦痛と、「失敗するかもしれない」という強烈な“損失リスク”を伴います。 人は「現状維持(ゼロ)」を基準にしたとき、そこから得られる「利益(成功)」の喜びよりも、失う「損失(失敗)」の痛みをはるかに重く受け止めてしまうようにできています(=プロスペクト理論の損失回避性)。
しかし、「教科書(成功事例)」をコピーして研修やツール導入(=作業 Task)を行うだけなら? たとえ失敗しても、「教科書通りにやった(=俺は悪くない)」と“叱られない”ための、完璧な“言い訳”が手に入ります。
DX推進が失敗する根本原因。それは、推進する側(管理職)が、「失敗」という「損失」を恐れるあまり、「“仕組み”を設計する」という本来の“仕事(Work)”から逃げていることに他なりません。
「統計データ」と「成功事例」の罠
この「損失回避」の心理が、教科書やネット上の「成功事例」に飛びつかせます。 「この方法で成功しました」 「データを集めて分析したらこうなりました」
しかし、それらの情報は「あなたの会社」の事情を考慮してくれているでしょうか? データの収集や統計処理は、今や難しいことではありません。しかし、その元データが、本当にあなたの会社にとって「欲しいデータ」である保証はどこにもありません。
それは、「こうやったらお金を稼げます」という情報商材と、本質的に何も変わらないのではないか。私はそう危惧しています。
成功が「パターン化」されないという現実
もちろん、探せば中小企業のDX成功事例も多く見つかります。 しかし、問題はそこではありません。それらの成功は、あくまで「その企業がどうやってうまくいったか」という固有のストーリーであり、成功の仕方が「俗人化」していて「パターン化」されていないのです。
経済産業省などが出す立派なレポートでは、どうしても体力のある大企業の事例が統計の多くを占めます。結果として、個々の中小企業のユニークな成功(あるいは失敗)は、統計上の「外れ値」として扱われがちではないでしょうか。
私が言いたいのは「中小企業の事例がない」ということではありません。 「『あなたの』会社にそのまま適合する都合の良い情報(=パターン化された答え)は、ネットや教科書のどこにもない」という現実です。
DX推進というプロジェクト自体が、この「一社一社で事情が違う」という最も重要な点を無視し、「平均化・統計化された情報」を提供している。 これこそが、DX推進がDX化に失敗している、と私が断言する理由です。
あなたの会社の「本当の事情」は、あなたにしか分からない
私がSEとして、また過去に製造現場の統括として痛感したのは、「あなたの会社の事情は、あなた自身も気づいていないかもしれない」という事実です。
- なぜ、あのベテランは「日報」をあんな書き方で提出してくるのか?(もしかしたら、その書き方こそが現場の真実を捉えているのかもしれません)
- なぜ、「在庫管理」のデータがいつも合わないのか?(もしかしたら、入力ミスではなく、現場の「暗黙のルール」がシステムと乖離しているのかもしれません)
他社の成功事例をコピー&ペーストする前に、自社の「なぜ」を深掘りしなければ、どんな高価なツールもゴミになります。
「めんどくさい」の先にしか、本質はありません。 10分の作業を5分にするために8時間かける。 この一見非効率な「めんどくさい」作業こそが、物事の本質(=仕組み)を見抜く唯一の道だと、私は信じています。
私が考える「本当のDX」とは
では、どうすればいいのか。 私は「本当のDX」とは、大げさなAI導入や高価なツール導入のことではないと考えています。
本当のDXとは、まず「自社に必要な情報は何か」を定義し、その情報が「今、どうなっているか」を、徹底的にアナログな手法で一つ一つ確かめることです。
- 必要な情報(ゴール)の定義: 「何がわかれば」経営は楽になるのか?
- 現状の把握(アナログ): その情報は今、誰が、どうやって、どこに蓄積しているのか?(紙の伝票? Excel? ベテランの頭の中?)
- 分析(デジタル): 十分に集まった「自社オリジナルの生データ」を、初めてデジタルデータとして分析する。
他社の真似ではない、自社だけのオリジナルデータをもって事業を拡張していくこと。 それこそが、私が信じるDXの本質であり、私の理想でもある「20年かけて到達した知見を1年で伝授する」ための土台となります。
結論:教科書を捨て、あなたの会社の「めんどくさい」と向き合う勇気
もしあなたが、 「ウチはDXなんて無理だ」と諦めているなら。 「AIで一発逆転したい」と夢見ているなら。
一度、ネット上の「成功事例」や政府の「立派なレポート」から目を離してみませんか?
あなたの会社に必要な答えは、教科書には載っていません。 それは、あなたの会社の「めんどくさい」日常業務の中に隠されています。そして、その「めんどくさい」から目をそらし、「教科書」という名の“作業”に逃げていないか、自分自身に問いかける勇気を持つことです。
私は、エリートコンサルタントのように立派な教科書は作れません。 しかし、製造現場の「もったいない」と、SEとしての「仕組み化」の両方を知る「伴走者」として、あなたの会社の「めんどくさい」に一緒に向き合うことはできます。
何から手をつければいいか分からない。 その「分からない」を言語化するところから、一緒に始めてみませんか?
▼「何から相談すればいいか分からない」方へ
まずは、あなたの会社の「モヤモヤ」を私にぶつけるところから始めてみませんか。
現場経験のある、私だからこそ、同じ目線で「めんどくさい」の先にある本質を一緒に探せると信じています。
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