「CADデータは封筒で管理」アナログ運用で疲弊した先輩。業務を引き継いだ私が気づいた「デジタル化の本当の意味」

 こんにちは。システムエンジニアの上野です。

※この記事は、筆者(上野)の過去の個人的な実体験に基づき、製造業におけるデータ活用の課題と「伴走支援」の重要性について考察したものです。ケーエスピー株式会社の公式な見解や、特定の企業様(過去の在籍企業を含む)を批判・評価する意図は一切ございません。

 「デジタルツールを導入したのに、なぜか業務が楽にならない」 「結局、一部の人しか使いこなせず、かえって非効率になっている」

 中小企業のDX推進において、このような「もったいない」事例は後を絶ちません。 実は私自身、過去に在籍していた会社(現在は倒産)で、デジタル化が完全に裏目に出てしまった「CADなのにアナログ管理」という、恐ろしい現場を体験しました。

 今日は、その失敗談と、私がそこから学んだ「デジタル化の本当の意味」についてお話しします。

1. たった一人の「CADが使える人」の退職

 その会社では、製品の「型紙」を出力するためにアパレルCADが導入されていました。 しかし、私が入社した時点で、そのCADをまともに触れるのはパートのAさんただ一人。そのAさんが家庭の事情で退職することになり、直属の先輩社員が業務を引き継ぐことになったのが、この物語の始まりです。

 先輩は、最低限の「型紙の出力方法」こそ引き継いだものの、根本的な操作は分からないまま。 つまり、「新しい型をCADに登録することができない」状態になってしまったのです。

 当時、新人の私は自分の仕事を覚えるのに必死で、このことが後に大きな問題に発展するとは気づきもしませんでした。

2. 優秀な先輩が「疎まれる存在」になるまで

 その先輩は、人当たりも良く、仕事もそつなくこなす優秀な人でした。 型紙担当になってからも数年間は、何事もなく業務をこなしていました。

 問題が顕在化したのは、私が社内の一通りの作業を把握し始めた頃です。 先輩が「型紙の作業が丸一日終わらず、残業時間になってからようやく自分の別業務を始める」という日が続いたのです。

 あれほど好青年だった先輩は、徐々に変わっていきました。 悪態をつき始め、ミスが増え、社内の雰囲気はギスギスし始めました。周りもヘルプに入っていましたが、業務の性質上、最終チェックは先輩に集中します。明らかにオーバーワークでした。

 そして、その先輩は会社を去る選択をしました。

3. 私が引き継いだ「悪魔のような作業」

 次に型紙を任されたのが、私でした。 しかし、先輩の状況を見て「このまま引き継いでも同じことを繰り返す」と確信していた私は、上司に「CADの勉強をさせてほしい」と願い出ました。

 先輩がまだ話を聞いてくれた頃、「なぜCADデータを使わないのか」と尋ねたことがありました。 返ってきたのは、 「CADの触り方をちゃんと聞いていない」 「勉強する時間がない」 「それを覚えても給料が上がるわけでもない」 という、現場の痛々しい本音でした。

 そして、いざ業務を引き継いだ日、私は唖然とします。

 CADから出力された型紙で、そのまま使えるものは皆無だったのです。

 先輩が行っていた作業は、こうでした。

  1. リピート注文(一部変更あり)が来ると、まず「封筒」が大量に入った引き出しを探す。
  2. その「封筒」の中にある手書きの指示書(紙)を見る。
  3. CADから「元型(基本の形)」を出力する。
  4. 封筒の中身(過去の紙)をまじまじと見つめながら、CADから出た紙に手作業で線を足したり、切り貼りを始める。

 デジタルツール(CAD)は「元型を印刷するだけの機械」と化し、製品の「仕様」や「変更履歴」という最も重要なノウハウは、「封筒の中の紙」というアナログデータで管理されていたのです。 レギュラー商品に至ってはデータすらなく、先輩の頭の中にしかありませんでした。

 これでは、デジタルとアナログの「悪いところ取り」です。非効率の極みでした。

4. 劇的な効率化と「本当の気づき」

 私は最初の1か月、上司を巻き込み土日も出勤してCADの操作習得に没頭しました。 そこからは、日々の「型紙出力(アナログ修正)」と、過去の「封筒の中身をCADに入力(デジタル化)」という二重の作業を、残業しながらこなす日々が続きました。

 しかし、ある瞬間、業務が劇的に効率化されます。 過去の型紙データを、片っ端からCADに登録し終わった瞬間でした。

 「前任者が丸一日かけていた作業」が、「別作業と兼任しながら半日」で終わるようになったのです。

 この経験で、私は最も重要なことに気づきました。 CADにデジタル化するために、私は「なぜ、この形になるのか」「なぜ、ここを修正するのか」という「理由」を考え、設定する必要がありました。

 その結果、それまで「お手本を見ながら、このあたりかな?」と感覚でやっていたアナログの型紙修正作業すら、「理由」が分かるようになっていたのです。

5. デジタル化とは「情報の整理」である

 なぜ、こんな非効率がまかり通っていたのか。 過去のベテランたちは、「理由」や「理屈」を「体験(暗黙知)」として持っていたため、手作業でも問題なくこなせていました。そして「レギュラーではないから」と、そのノウハウをCADに入力しなかった。

 問題は、その業務が「丸覚え」で伝承されてしまったことです。 理屈が分からないまま「丸覚え」で引き継いだ結果、応用が利かないどころか、覚える量が膨大すぎてパンクするような「すべて手作業」という悪魔のような作業が生まれていたのです。

 デジタル化とは、単にパソコンを触ることではありません。 それは「情報の整理」であり、業務の「理由」や「理屈」を再定義することです。

 パソコンが苦手な人でも、「なぜこの作業が必要か」「どうなれば楽になるか」という「理由」を整理することはできます。

 それを「小難しいシステム」に落とし込み、現場の誰もが使えるようにするのが、我々IT屋の仕事です。ぜひ、そこはプロに任せていただきたいと思います。

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