「ウチのデータはExcelと紙だ」と諦めた社長様へ。

「ウチのデータはExcelと紙だ」と諦めた社長様へ。DXの9割を決める「正しいデータの整理術」

　「売上データは基幹システムに、顧客名簿は営業担当のExcelに、見積書は紙のファイルに…」社長様、貴社の「宝（データ）」がバラバラになっていませんか？「データが整理できていないから、ウチはDXなんて無理だ」と諦めるのは早すぎます。実は、データの整理こそが、DXの9割を決める「最初の一歩」であり、最も重要な「経営判断」なのです。

この記事は、中小企業のDXステップをまとめた『DX育成マップ』の【階層1：基礎】に該当する内容です。 DXの全体像や、経営者が知るべき基礎知識から確認したい方は、まずはこちらのマップをご覧ください。 KSP総合研究所の「DX育成マップ」を見てみる

なぜ「いきなりツール導入」が100%失敗するのか？

　「データがバラバラだ」と悩む経営者が、最初にして最大の失敗をします。それは、「Excelより高機能なCRM（顧客管理）ツールを導入すれば解決するはずだ」と、いきなりツール（手段）に飛びつくことです。

　しかし、現場の業務フローや、「どのデータを・何のために見るか」が決まっていないまま高価なツールを入れても、現場は混乱し、誰も使わなくなります。これは、以前の記事（なぜDXは失敗する？）で解説した、「目的があいまいなままベンダーに丸投げする」という典型的な失敗パターンです。

　道具（ツール）を買う前に、まず「作業場（データの置き場所）」を整理するのが正しい順番です。

経営者が決断すべき「正しいデータ整理」3つのステップ

　データの整理は「IT担当者のタスク」ではありません。「社長の経営判断」です。以下の3つのステップで進めてください。

ステップ1：「目的（ゴール）」を決める

　「何のために」データを整理するのか？この目的が全ての土台です。「コスト削減（守り）」のためだけに見るのではありません。

例1：「どの顧客が・いつ・何を買いそうか」を予測し、売上を上げたい
例2：「どの工程に・どれだけ時間がかかっているか」を見える化し、ムダをなくしたい
例3：「あのベテランの勘（作業ノウハウ）」をデータ化し、技術を継承したい

　このように「何を見つけたいか」という「宝の地図」を持つことが、私たちが提唱する「宝探し経営「宝探し」経営とは？）」の第一歩です。

ステップ2：「捨てる勇気」を持つ

　最も重要です。「社内の全データを、完璧に、全部デジタル化しよう」としてはいけません。必ず頓挫します。ステップ1で決めた「目的」に関係のないデータは、「捨てる（今は無視する）」という経営判断をしてください。

まずは「売上予測」という目的なら、「売上データ」と「顧客データ」だけを整理対象にする。 「現場の日報」や「経費データ」は、今回は無視する。

　まずは「100万円未満（ROI不安の記事）」でできるスモールスタートを切ることが成功の鍵です。

ステップ3：「5W1H」でデータを「棚卸し」する

　ステップ2で「売上データと顧客データを整理する」と決めたら、次に「いきなりツールを探す」のはまだ早すぎます。まず、そのデータが「どのような状態か」を把握する「棚卸し」が必要です。

　以下の「5W1H」の観点で、今あるデータを洗い出してみてください

When（いつ）: データはいつ作成・更新されているか？（リアルタイム？月末締め？）
Where（どこに）: データはどこに保存されているか？（AさんのPC？共有サーバ？紙のキャビネット？）
Who（誰が）: そのデータは「誰が」入力し、「誰が」見ているか？
What（何を）: どんな項目（列）があるか？（「(株)」と「株式会社」が混在していないか？住所の番地は全角か半角か？）
Why（なぜ）: （ステップ1で確認済み）「何のために」そのデータを見るのか？
How（どうやって）: どうやって入力されているか？（手入力？システムから自動転記？）

　この「棚卸し」を行うだけで、「ああ、ウチは『Where（場所）』がバラバラだから探すのに時間がかかるんだな」とか、「『What（項目）』のルールがないから集計できないんだな」という「本当の課題（お困り事）」が明確になります。こんな地道なルール決めこそが、「AIによる需要予測」といった高度なDXの、最も重要な「土台」となります。