「風呂場にキッチンを作ってくれ」と言われたら、プロのSEはどう答えるべきか?
こんにちは、上野です。 先日、「要件定義(どんなシステムを作るか決めること)は誰の仕事か?」という議論を目にしました。
「お客様は素人なんだから、プロであるSEが導くべきだ」 という意見もあれば、 「お客様の言う通りに作るのが仕事だ」 という意見もあります。
私は、どちらも半分正解で、半分間違いだと思っています。 SEの本当の役割は、「お客様の言葉を深く聞くこと」と、同時に「お客様の言葉を疑うこと」の2つがセットだからです。
1. 「常識外れ」には2種類ある
極端な例を出しましょう。 もしお客様から「お風呂場の中にシステムキッチンを設置してほしい」と注文されたら、あなたならどうしますか?
ここには、天と地ほど違う「2つの可能性」があります。
パターンA:必然性のある「非常識」
もし、そのお客様が「巨大な鮮魚を丸洗いしながら、その場で加工・調理する特殊な趣味の持ち主」だった場合。 リビングのきれいなキッチンでは、床が水浸しになってしまいます。 この場合、お客様の「風呂場にキッチン」という突飛な要求は、その現場においては「ド正論」です。
パターンB:ただの「思いつき」
一方で、もしお客様が「最近、サウナ飯が流行ってるから、風呂場で料理できたら面白いと思って」と言い出したらどうでしょう? これはただの「思いつき(ノイズ)」です。 これを実現したら、湿気で食材は腐り、衛生環境も劣悪になり、数ヶ月で使えなくなってしまいます。
2. 聞く力と、否定する力
ダメなSEは、このAとBを見分けられません。 「言われた通り作りました(パターンBを実装)」と言って失敗するか、「常識的にあり得ません(パターンAを却下)」と言って現場の可能性を潰します。
実は、国のIT政策を担うIPA(情報処理推進機構)が発行しているガイドラインでも、要件定義における「ユーザー(発注者)の責任」と「ベンダー(SE)の役割」について厳しく指摘されています。
要件定義は、業務そのものを定義する作業であり、発注者(ユーザ企業)が主体となって進めなければならない。 (出典:IPA ユーザのための要件定義ガイド 第2版)
つまり、SEは「言われた通り作るロボット」ではなく、ユーザーが主体的に語る「現場の要望」を、プロの技術で翻訳する通訳者でなければならないのです。
3. 「NO」と言えるのがパートナー
経済産業省の『DXレポート2』でも、ベンダーに丸投げする「受託型」からの脱却と、「ユーザー企業とベンダーの共創」が必要不可欠だと結論づけられています。
「お客様の言うことだから」と全部鵜呑みにするのは、優しさではありません。無責任です。
- 事情があるなら、常識外れでも実現する方法を探す。
- 思いつきなら、社長相手でも「NO」と言って止める。
この「フィルター役」になれるかどうかが、DXパートナー選びの分水嶺です。
4. 結論:喧嘩ができる関係ですか?
要件定義とは、一方的に決めるものでも、一方的に従うものでもありません。 お客様の「やりたいこと」の中に混ざっている、「宝石(現場の真実)」と「石ころ(思いつき)」を選別する共同作業です。
私は、お客様の言葉をまずは受け止めます。 ですが、それが単なる思いつきだと判断したら、ハッキリと否定します。 「せっかくお金をかけるんですから、その機能はやめましょう」と。
イエスマンの業者よりも、時には耳の痛いことを言うパートナーの方が、結果的にあなたの会社を守ると信じているからです。
私は、製造現場の「もったいない」を知るSEとして、その「めんどくさい」に隠された「お宝データ」を発掘し、仕組み化するお手伝いをしています。
「ウチも同じ問題を抱えている」 「何から手をつければいいか、一緒に考えてほしい」
そうお考えの経営者様、ご担当者様。 まずは、あなたの現場の「めんどくさい」を、私に聞かせていただけませんか。
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